自動車保険の過失相殺

■自動車保険ではどのように過失相殺が行われるのか

過失相殺は、交通事故によって生じた被害者の損害を、公平性の観点から、被害者の過失の度合に応じて減額して賠償する制度です。では、自賠責保険と任意保険では、過失相殺の仕方について、異なる点があるのでしょうか。

任意保険の場合、ほとんどの事故で過失相殺をします。任意保険では重過失( ちょっとした注意で事故を避けられたのにその注意を怠った場合) だけでなく軽過失であっても過失相殺の対象にするからです。

これに対して、自賠責保険( 強制保険) については、被害者に重大な過失があった場合に限って過失相殺をします。

害者が強制保険で重過失が認定されるのは、①信号を無視して道路を横断した場合、②横断が禁止されている場所を横断した場合、③道路上に寝ていた場合、④信号を無視して交差点に進入し衝突した場合、⑤センターラインを超えて衝突した場合などです。

さらに、過失相殺される減額率も定型化されており、死亡と後遺障害が発生した場合について、20、30、50% の3 段階、傷害の場合は、20% だけです。これに対して、任意保険では、過失の程度を問わず、過失相殺をします。

相殺によって減額する率は、過失割合認定基準表から過失割合を導き、それに従って減額します。任意保険は、実際に発生した損害をてん補する制度なので、軽過失の場合でも相殺が行われ、ち密に査定した上で、相殺率が決められるのです。

過失相殺する額の計算方法は、まず被害者の損害の総額を算出し、この総損害額に被害者の過失割合を掛けてその額を総額から控除します。そして、控除後の額から強制保険から補てんされた保険金の額を差し引き、残りの額について任意保険から支払いを受けることができます。

自賠責保険で損害額の補てんが足りた場合は、任意保険からの支払いはないことになります。

■被害者の素行が悪いために損害が拡大した場合

事故後の被害者の素行が悪いために治療が長期化したり、ヶがなどの症状がさらに悪化した場合、その損害すべてについて加害者が責任を負わなければならないのでしょうか。

過失相殺の制度は、当事者間の損害の公平な分担のために、被害者の過失を考慮して賠償額を決定するものです。そこで、このような場合、過失相殺によって、損害賠償の支払いを減額できる可能性があります。

事故の後に、被害者が通常要求される注意を怠ったために、ヶガが悪化した場合など、損害が拡大したときも、過失相殺の制度が適用されます。ただ、事故後の過失と拡大損害の間との因果関係の証明は非常に難しいものです。

このため、一応、加害者の責任を損害全額について認めた上で、過失を認定して過失相殺を行い、実際の賠償額を算定する方法をとっています。裁判例によっては、50% の過失相殺を認めたものもあります。